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HIV陽性者のゲイが治療や予防についてアレコレ語るブログ

不特定多数とのセックスを避けるのはHIV感染予防として有効か

みなさんこんにちは。
いしざわです。

先日の自己紹介の記事で、ブログの開設目的の一つに「感染予防に関する保健所・検査機関の説明やパンフレット等の内容が教科書的すぎて、説得力が足りない気がする」ってのを書きました。

hiv-positive.hatenablog.jp

今回は感染対策の方法論のうち「不特定多数とのセックスを避ける」について、ゲイかつHIV感染者の視点から考えてみたいと思います。

不特定多数とのセックスを避けても、感染を完全に防げるわけではない

私がHIVに感染した経緯から考えた持論となりますが、「セックスの相手を特定少数に絞るのは、感染予防として効果がなくはないが、完全に防ぐのは難しい」となります。

ちなみに、私が今まで行ってきた予防策はこんな感じです。

  1. 発展場や乱交パーティーなど、感染リスクが高い場所には行かない
  2. セックスの相手は定期的に会うセフレ(数人)が中心で、定期的に検査に行くことを条件にナマでやっている
  3. 9monstersやTwitterのフォロワーさんからお誘いがあることも時々あるが、初めて会う相手には必ずコンドームを使用する
    定期的に会うようになってセフレ化した場合、2に準ずる対応をする

1については「不特定多数とのセックスを避ける」、3については「コンドームを使用する」の予防策を忠実に実行していた形になります。
この2つを徹底するだけでもそれなりに効果はあり、事実として、ゲイとしてセックスするようになってから10年はHIVに感染せずに過ごすことはできました。

問題は2の部分で、「不特定多数とのセックスを避ける」を「特定少数とセックスする分には大丈夫」と解釈し、特定のセフレとセックスする際にはコンドームを使用せずにセックスをしていました。
相手固定だし、定期検査してるし大丈夫でしょ、と楽観していたら、セフレの1人がHIVに感染し、HIVウイルス入りの精液を流し込まれてあえなく私も感染、といった流れになります。

要するに、セックスの相手が特定少数でも、その特定少数の人の誰かがHIVに感染した場合、自分もHIVに感染する可能性がある、ってことです。
それゆえに、「感染予防として効果がなくはないが、完全に防ぐのは難しい」といった、本節冒頭の結論が出てくるわけです。

定期検査って有効なの?

これも結論から言うと、定期検査に行くこと自体は悪いことではないが、感染予防の判断材料として使うのは危険なので、予防策として考えないほうが良いとは思います。

HIVも含め、性病全般は感染してから抗体ができるまでに時間がかかるため、ウインドウ期と呼ばれる「感染していても抗体検査に引っかからない期間」が存在し、この期間に検査を受けても「陰性」と判断されてしまいます。

www.hivkensa.com

HIVはウインドウ期が通常4週間程度とされていますが、抗体ができるペースには個人差があるため、「陰性であることを確定するには3ヵ月必要」となっています。
保健所が「感染から90日経ってから検査受けてください」と言ってくるのはこのためです。

要するに、HIVの検査を受けて分かるのは1~3ヵ月前の感染しているか否か」でしかなく、リアルタイム性が薄いため、セックスをする際に相手がクリーンかどうかの判断材料として使うのは危険ということは言えると思います。

例えば、「3ヵ月前に検査して大丈夫だった」は「4~6ヵ月前に陰性だった」ということになります。
セフレとして関係を持つような子が半年もセックスレス、って状況は考えにくいので、検査結果から相手が性病に感染してるか否かを判断するのはナンセンスだったんじゃないか、と今となっては思います。

ただし、万が一の感染があった場合の早期発見・早期治療を考えるうえでは定期検査を受けるのは非常に有効です。
私も定期検査でHIVが分かった身ですので、少しでも感染リスクがあるセックスをしているのであれば受けておいて損はないと思います。

パートナー以外とのセックスをしなければ感染しない、といったわけでもない

「不特定多数とのセックスを避ける」を極限まで突き詰めると、「パートナー以外とのセックスを完全にしないようにする」が理想論となります。
ただ、これは「自分がパートナーとしかセックスしない」だけではダメで、相手も含めて「2人ともパートナー以外とセックスしない」のが前提となるので、ゲイの恋愛観だとだいぶ厳しいんじゃないかと思います。

unlo.me

一昨年・2019年の調査となりますが、「ゲイの彼氏持ちの7割が他人ともセックスしている」といった結果が出ており、パートナーだからといって他の子とセックスをしない保証はないと言っても過言ではないかと思います。

前述のセフレがHIVに感染していた件も、例のセフレには同棲中の彼氏がいるとの話を聞いており、パートナーがHIVもらってくるパターンも現実に起きていたりします。
具体例が身近に出てくるのが怖いところですね。

コンドームかPrEPで感染対策をしましょう

結局のところ、「不特定多数とのセックスを避ける」は、特定少数の相手(固定のセフレやパートナー)からHIVを持ち込まれたパターンで瓦解するので、冒頭で出した「効果がなくはないが、完全に防ぐことはできない」といった結論になります。

それを踏まえて、どう対策するかを考えると、

  • コンドームをつける
  • コンドームがどうしても嫌ならPrEPする

…といった2択になるかとは思います。

「不特定多数とのセックスを避ける」ってのも確かに大切ですが、それだけではどうしてもカバーできない状況が出てくるので「コンドームをつけろ」って繰り返し教科書的に言われてるのは意味があると、実体験というか、自分のやらかしから学んだ気はします。